運用担当者が誰かご存知ですか

投資信託のメリットの1つは、投資のプロに運用を委託できることです。投資信託に支払う高い費用もプロに運用を委託する対価と言ってもいいでしょう。では、保有している投資信託の運用担当者が誰でどんな人かご存知でしょうか。その人は大切な資金を任せるに足りる人でしょうか。その人は本当にプロと呼べる人でしょうか。

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運用担当者は重要な評価項目

アクティブ運用の投資信託を評価する際は、次の5つのPを確認することが大切と言われています。

Philosophy(フィロソフィー。運用理念や投資哲学に共感・納得できるか)

Process(プロセス。投資対象の選定過程が明確に示されているか)

Portfolio(ポートフォリオ。フィロソフィー、プロセスに沿っているか)

People(ピープル。運用体制や運用担当者の経歴に納得できるか)

Performance(パフォーマンス。過去の運用実績)

そのうちの1つがPeople(ピープル。運用体制や運用担当者の経歴に納得できるか)です。運用担当者の開示がなければ、まともに投資信託を評価することができません。

それなのに、日本の大手の運用会社は、米国では当たり前に開示されている、運用担当者の氏名や当該ファンドの運用年数等、投資家にとって購入や保有の判断に影響する重要な情報を開示していません。

それでも開示されない運用担当者

投資信託の販売用パンフレットにも次のような言葉が並べられています。「プロが運用しています」、「投資の専門家集団が運用しています」、「経験豊富な運用チームが運用しています」。でも、ほとんどの場合、それが本当かどうか調べようがないのが実状です。日本では多くの運用会社が投資信託の運用担当者を開示していないからです。

米国ではファンドの運用担当者情報が明確に開示されています。開示範囲は、氏名だけでなく、経歴や経営陣や運用担当者がそのファンドをどれくらい保有しているかまで、広範囲にわたっています。

ところが、日本では開示義務がなく、ほとんどの投資信託が運用担当者の氏名すら開示していません。運用会社のウェブサイトには、せいぜい、運用を担当する部署のトップの氏名や運用グループの運用経験年数が示されているだけです。これは誰得の情報なのでしょうか。何も開示しないままでは批判を浴びるので「開示している」フリをしているのが実情です。

常識的に考えて、大切な資金の運用をどこの誰かわからない人に委託することはできません。顧客がファンドの実質的な運用担当者の開示を必要としていることは運用会社も販売会社も十分にわかっているはずです。では、なぜ、投資信託協会(業界大手の運用会社)を中心に、多くの会社がPeopleの開示を拒み続けているのでしょうか。それには知られてはまずい裏があるのです。

運用会社のいい言い訳

日本の運用会社の大半は、欧米のような一人のスーパースターに頼る運用ではなく、合議制によるチーム運用が主体です。なので、運用担当者を開示する必要が必ずしもありません。

中には、こう逆切れする人もいます。

運用担当者の開示が必要と声高に唱える人は、日本の運用業界の実態を理解していない人の戯言だ。何でもかんでも米国の真似をしなくてもいい、もっと日本の運用業界のことを勉強してから発言すべきだ。

合議制のチーム運用といえども、多数決で決める運用はあり得ません。運用チームにはチームを統括する人間がいて、最終的にはその人個人の意向が運用の意思決定に色濃く反映されます。チーム運用といえども、投資信託を選ぶ上で誰が運用を担当しているかは、投資信託の良し悪しを判断する為に必要な、極めて重要なファクターです。

米国と日本の文化の違いを理由に、運用担当者の開示は不要と唱える御用学者や研究者がいますが、それは大きな間違いです。資金を預ける顧客の立場に立てば、運用担当者が誰でどんな人か知りたいと思うのごく当たり前の要求です。顧客の利益を優先するなら、運用会社は顧客ニーズにこたえる責任があります。

運用担当者を開示しない本当の理由

運用会社の怠慢

単なる業界の怠慢です。プロ向けの年金運用で開示する一方で、一般顧客向けの投資信託で開示しない理由はありません。「日本は海外と違ってチーム運用だから、海外と同じように個人を開示することは実態に合わない」等の見苦しい言い訳を業界の関係者がごり押ししています。プロの運用をアピールして手数料を徴収する傍ら、誰が運用しているかを明らかにしないのは道理が通りません。

米国では、ファンドの運用担当者情報を開示しなくてはいけません。運用担当者の開示がないファンドはそもそも資金を集めてはいけないのです。当然ながら投資家は大切な資金をどこの誰かもわからない人に委ねることはありません。

しかし日本では、運用担当者の開示がないのが当たり前となっています。そして驚くことに、運用担当者が開示されていなくても投資信託が売れる状況にあります。

販売員「誰が運用しているのか私もわからないけど、まあ、とにかく当社に任せてよ。」

顧客「はいわかったよ」

こういうやり取りが販売の現場でなされているのでしょうか。ブランド力や巧みな宣伝文句で商品を売る運用会社と、それを買うカモとなる客。これが日本の投資運運用ビジネスの実態です。

プロではないサラリーマンが担当しているから

いわゆるみんながイメージするプロとは程遠い普通の人がファンドマネジャーという職業についています。一握りの運用担当者を除き、多くの運用担当者は、会社に所属して安定したサラリー(給与)を得て生活しているサラリーマン・ファンドマネジャーです。

こうした人々は、取引先の証券会社にはファンドマネジャーとしてチヤホヤされる一方、一般顧客相手では自分が運用担当者であることを知られたくない(責任を負いたくない)と考える人々です。このような人たちが運用を担当しているなんてことがバレてしまうと都合が悪いのです。

名ばかり運用の実態がばれてしまうから

どんなにすぐれたプロのファンドマネジャーでも、1つのファンドを運用するのに精いっぱいです。聖徳太子や千手観音のような人はそうそういません。いわんや、普通のサラリーマン・ファンドマネジャーが、複数のファンドを担当できるわけありません。

でも、実際は、1人の運用担当者が、複数のファンドを担当しているのは珍しくありません。つまり、サラリーマン・ファンドマネジャーが担当しているおざなり状態の投資信託がたくさんあるということです。運用担当者を開示するとそのことがバレてしまいます。「プロの運用」を期待して資金を投じた人から見れば、詐欺のようなものです。

運用担当者の交代がばれてしまうから

運用担当者が開示されていると、社内異動や転職で運用担当者が変わったことが、投資信託の購入者にばれてしまいます。投資信託の購入者にとって、運用担当者の変更は、本来ならばその投資信託を継続保有するか否かの重要な判断材料になるものです。でも、もともと運用担当者を開示していなければ、たとえ運用担当者が交代してもその事実がバレることはありません。

運用担当者がファンドを買っていないことがわかってしまうから

顧客の利益よりも、手数料収入の獲得を目的に設定される、運用会社の職員が絶対に買わない投資信託がたくさんあります。運用会社の役員や運用担当者自身がファンドにどのくらい投資しているかの開示が義務付けられたら、自分では絶対に買わない投資信託を顧客に販売している実態ががバレてしまいます。

アクティブ運用とインデックス運用

運用担当者の開示が必要なファンド

アクティブ運用の投資信託を評価する場合、運用担当者情報は必須です。なぜならば、アクティブ運用のパフォーマンスは運用担当者の腕次第だからです。

プロによる運用をアピールしながら、誰が運用しているかを開示しないのは道理が通りません。そういう運用会社は、開示したら都合が悪いことを隠していると警戒してください。例えば、人事異動等で運用担当者がコロコロ変わっている。投資信託を乱造した結果、同じ人が複数の投資信託を兼務している状態にある。プロとは言えない人が運用担当者となっている等が考えられます。

運用担当者を開示していないアクティブ運用の投資信託は購入しないことをおすすめします。

運用担当者の開示を必ずしも必要としないファンド

一方、インデックス運用の投資信託を評価する場合、運用担当者情報は必ずしも必要ではありません。なぜならば、インデックス運用のパフォーマンスはマニュアル通りに作業をすれば誰がやってもほぼ同じ結果となるからです。

もちろん特別な能力を必要としないインデックス運用といえども、大切なお金を取り扱う仕事である以上、どんな人が担当をしているかの開示があるに越したことはありません。米国では、インデックス運用といえども運用担当者の開示が義務付けられています。顧客の利益を考えれば、運用担当者の開示は必須です。

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