運用成績の大部分は運用スタイルで決まる

一見、パフォーマンスのよさそうな投資信託があっても、パフォーマンスの大部分は「運用スタイル」の違いで説明できることがほとんどです。運用会社が主張する「プロによる目利き」の効果は、あっても微々たるもの、というのが現実です。

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その典型的な例が「小型株投資」です。全くの素人でも、ただ単に、小型株にまんべんなく投資するだけで、プロが運用する投資信託の平均的なパフォーマンスを、長期で大幅に上回るリターンが獲得できる傾向があること(小型株効果)が知られています。

具体的に言うと、トヨタや任天堂などの誰でも知っている大企業に投資するのではなく、知名度の低い中堅・小型企業に投資した方が、より高いリターンが獲得できる(可能性が高い傾向がある)ということです。

運用スタイルとは

運用スタイルとは、どのようなタイプの対象に投資するかという分類です。

投資信託に関心のある方なら、一度は、バリュー株投資、グロース株投資という言葉を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。バリュー株投資は主にバリュー株(割安株)に投資する運用スタイル、グロース株投資は主にグロース株(成長株)に投資する運用スタイルです。

小型株投資も、運用スタイルの1つです。投資対象となる株式を規模で分類したものです。「運用成績の大部分は運用スタイルで決まる」1つの例として、次に、小型株が大型株のパフォーマンスを長期で上回る現象(小型株効果)を解説したいと思います。

小型株効果とは

次の表は、過去10年間(2008年8月末から2018年8月末)における、「TOPIX(配当込み指数)」と「TOPIX Small(配当込み指数)」の騰落率を比較したものです。(TOPIX Smallは、TOPIXの算出対象のうち小型株によって構成される株価指数です)

「TOPIX Small」と「TOPIX」の騰落率比較(基準日:2018年8月末)

期間TOPIXTOPIX Small
直近10年間+70.3%+150.3%+80.0%
直近5年間+73.8%+101.4%+27.6%
直近3年間+20.3%+36.3%+15.9%

ご覧のとおり、小型株で構成される「TOPIX Small」指数は、大型株のウェイトの高い「TOPIX」を、中長期で大幅に上回るパフォーマンスだったことが確認できます。端的に言えば、これが小型株効果です。

小型株効果は、日本だけでなく、世界中の多くの株式市場で観察されている現象です。小型株効果がどうして起こるのかは不明で、1種のアノマリーとされています。(アノマリー:はっきりとした理論的な根拠を持つ訳ではないものの、よく当たるかもしれないとされる経験則)。当然、この小型株効果は、どんな市場でも、どんな時代でも、必ずプラスになるということではなく、例外もあります。

ただ、日本株について言えば、事実として、少なくとも過去10年間は、何も考えず、ただ小型株に広く投資するだけで、一般的なファンド(TOPIX)を大きく上回るパフォーマンスが実現できたということです。

運用成績は運用スタイル次第

「小型株を中心に投資する」、「大型株中心に投資する」というのが運用スタイルです。「運用成績の大部分は運用スタイルで決まる」と題するこの記事。小型株に投資するのか、大型株に投資するのか、それが投資成果に大きく影響するということです。

ちなみに、運用スタイルは、大型株、小型株といった、投資対象の「規模」で分類する他、主として割安株(バリュー株)に投資するのか、成長株(グロース株)に投資するのかといった、投資対象の「性質」で分類する方法が一般的に採用されています。

いわゆる「バリュー相場」なら、バリュー株を主な投資対象とするファンドが、市場平均を上回るだろうし、ITバブルのような時は、グロース株を主な投資対象とするファンドが好成績となります。投資信託の購入者目線にたてば、どの運用スタイルを選ぶかが最も重要な判断になるということです。

「すごいパフォーマンスのいい投資信託」をみつけたとしても、投資対象銘柄を絞り込んで運用しているファンド(株式投信でいえば、概ね20銘柄以内の銘柄に集中投資しているファンド)でない限り、パフォーマンスの大部分は「運用スタイル」の違いで説明できることがほとんどです。

高い費用を徴収することを正当化する為に、運用会社が強調している「プロによる目利き」の効果は、あったとしても微々たるもの、というのが現実です。

あなたは、何の成果も生み出していない運用担当者(ファンドマネジャー)に、高い信託報酬を支払い続けていないでしょうか。

投資信託を選ぶ時に注意すべきこと

投資信託を選ぶ時に注意すべきは、一言でいえば「運用会社が発信する情報を鵜呑みにしない」ことです。鉄則です。でも、これこそ、初心者にとっては「言うは易く行うは難し」だと思います。なぜならば、初心者は、そもそも何が分からないかが、わからないからです。運用会社や販売会社の営業マンが言うことを鵜呑みにせざる得ないのが実状だと思います。

そこで、初心者でも実行可能な、投資信託を選ぶ時に最低限実行すべき3つのルールをお教えしたいと思います。

  • モーニングスターの投資信託の格付け評価を知る
  • ベンチマークが設定されていない投資信託には手を出さない
  • 運用実績のない新規ファンドには手を出さない

モーニングスターの評価を知る

モーニングスターは投資信託の格付け評価会社です。まずはこのサイトで、関心のある投資信託を検索してみてください。独自の評価基準に則って、5段階の評価(★の数)しています。よほどの理由がない限り、★が3つ以下の投資信託を敢えて選択する必要はないでしょう。

例えば、これを見れば、話題の「ひふみ投信」も、「小型株グロース」に分類される投資信託の中では、平均以下のパフォーマンスということを知ることができます。好成績は、小型株効果によるだけで、運用会社がアピールする「プロの運用担当者による銘柄の選別効果」はマイナスということです。

ベンチマークが設定されていない投資信託には手を出さない

ベンチマークを設定していない投資信託は、顧客の利益を軽視している悪質な投資信託である可能性が高いです。たくさんの投資信託がある中、敢えてこのような投資信託を買う理由はありません。

ベンチマークが設定されていない投資信託を買わないことで、悪質な投資信託をつかまされるリスクは大幅に減ります。詳しくは下記の別記事をご覧ください。

ベンチマークを設定していない投資信託を買ってはいけない理由

運用実績のない新規ファンドには手を出さない

ファンド評価を生業としているモーニングスターでさえ、評価対象を、少なくとも3年以上の運用実績のある投資信託に限定しています。少なくとも3年間の運用実績がなければ、その投資信託を評価することは、プロでも困難ということです。いわんや初心者をや、です。

証券会社や銀行は、素人の客に、運用実績のない投資信託を平気で売りつけてきます。その銀行の営業担当者すら買わない投資信託を。

まとめ

投資信託の運用会社や販売会社の販売用パンフレットには、「プロによる運用」が実態以上に強調されています。実際は、プロによる目利き(銘柄の選別能力)のほとんどは幻想にすぎないからです。

投資信託のパフォーマンスの大部分は、運用スタイルで決まります。これが現実です。株式を投資対象とする投資信託ならば、主として大型株に投資しているのか、バリュー株に投資しているのかによって、パフォーマンスの良し悪しが決まるということです。

巷で有名なファンドも例外ではありません。運用パフォーマンスを、「運用スタイルによる効果」と「ファンドマネジャーの目利きによる効果」に分解して分析してみると、運用会社がアピールする「ファンドマネジャーの目利きによる効果」は、むしろ長期でマイナスとなっていることも珍しくありません。ひふみ投信がその代表例です。

こうした実状を踏まえて、投資家が注意することは、「運用会社が発信する情報を鵜呑みにしない」ということです。投資信託を選ぶときは、少なくとも次の3つを実行することをおすすめします。

  • モーニングスターの投資信託の格付け評価を知る
  • ベンチマークが設定されていない投資信託には手を出さない
  • 運用実績のない新規ファンドには手を出さない

さいごに

記事中、ひふみ投信を悪い例として取り上げています。ひふみ投信は、運用担当者が誰なのかすら開示しないで「プロによる運用」を建前に高い信託報酬を徴収する他社の投資信託に比べれば、はるかに良心的なファンドと思います。ただ、この投資信託があまりにも有名で、多くの支持を得ているからこそ、注意喚起を促すために、敢えて記事の中に取り上げた次第です。

運用パフォーマンスを最重要に考えるなら、プロによる目利きの効果が長期でマイナスと判断される「ひふみ投信」ではなく、中小型グロース株に投資するインデックファンドを買うのが賢明でしょう。

ひふみ投信からしたら、「我々のファンドは、モーニングスターが分類するような、小型グロースではない」、「勝手にそれらと比較しないでほしい」と反論するかもしれません。

だとしたら、誰にとっても意味をなさない「参考指数」ではなくて、まずは、ベンチマークが何かを正々堂々と明らかにして、公表しなさいと言うことです。ベンチマークがわからなければ、投資家は、運用会社が主張する「運用担当者の目利きの効果」が本当にあるのかどうかを確かめることすらできません。この点を除けば、素晴らしいファンドだと思いますが、レオス・キャピタルワークスさん、いかがでしょうか。

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