パフォーマンスを実体よりもよく見せている運用会社はここだ

投資運用業界では、実際は運用がうまくいっていないのに、うまくいっているかのようにみせかける行為が横行しています。典型的な手口が「配当分を計算に入れない指数」をベンチマークに設定する行為です。そんな顧客本位とは程遠い行為を行っている運用会社をこの記事で明らかにしたいと思います。

スポンサーリンク

配当なし指数をベンチマークとすることがなぜ悪質なのか

適切なベンチマーク(比較対象)があって、初めてパフォーマンスの適切な評価ができます。

にも関わらず、ベンチマークすら設定していない投資信託が存在します。ベンチマークが設定されていない投資信託は、購入者はパフォーマンスを評価することができません。たとえプラスの運用収益があがっても、それが単なるマーケット要因(株式市場全体が上がった結果)によるのか、運用担当者の実力によるのか区別がつかないからです。

また、ベンチマークを設定していても、不適切なベンチマークが設定されている投資信託があります。典型的なのは、「配当分を計算に含めない株価指数」をベンチマークとする投資信託です。騰落率が、配当分、低く計算される「配当なし指数」をベンチマークに設定することで、ファンドのパフォーマンスを実体よりもよく見せることができます。

この記事では、適切なベンチマークが設定されているか否かという視点で、運用会社を評価しようと思います。

そんな些細なことはどうでもいいとお感じになられている方もいらしゃるかもしれませんが、決して些細なことではありません。詳しくはこの記事をご覧ください。

そのベンチマークは配当が考慮されていますか

調査対象

さて、本題に入ります。不適切なベンチマークを設定している運用会社はどこでしょうか。

評価対象会社は、公募投資信託の純資産残高上位10社(2018年7月末)の以下の運用会社です。

  • 野村アセットマネジメント
  • 大和証券投資信託委託
  • 日興アセットマネジメント
  • 三菱UFJ国際投信
  • アセットマネジメントOne
  • 三井住友トラスト・アセットマネジメント
  • 三井住友アセットマネジメント
  • フィデリティ投信
  • 大和住銀投信投資顧問
  • ニッセイアセットマネジメント

評価対象ファンドは、国内株式型の投資信託のうち、純資産残高上位のファンド(ファンドラップやETFを除く)から任意に選んだ5ファンドです。

分析結果

調査結果は次のとおりです。

野村アセットマネジメント

ファンド名ベンチマーク評価
ノムラ日本株戦略ファンドTOPIX(配当なし×
日本企業価値向上ファンドベンチマークなし×
野村日本割安低位株投信ベンチマークなし×
ノムラ・ジャパン・オープンTOPIX(配当なし×
日本好配当株投信ベンチマークなし×

調査5ファンド全て×。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが2ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが3ファンドありました。これが日本を代表する運用会社の実状です。

大和投資信託

ファンド名ベンチマーク評価
ストックインデックスファンド225日経平均株価(配当なし×
DCダイワ日本株式インデックスTOPIX(配当なし×
DC・ダイワ・バリュー株・オープン(DC底力)TOPIX(配当なし×
日本株発掘ファンドTOPIX(配当なし×
ジャパン・エクセレントTOPIX(配当なし×

調査5ファンド全て×。全てに、「配当なし」の不適切なベンチマークが設定されています。まさか野村がやっているから大丈夫なんて思ってないでしょうね。

日興アセットマネジメント

ファンド名ベンチマーク評価
インデックスファンド225日経平均株価(配当なし×
ジャパン・ロボティクス株式ファンドベンチマークなし×
年金インデックスファンド日本株式(TOPIX連動型)TOPIX(配当なし×
日興ジャパンオープン(ジパング)TOPIX(配当なし×
利益還元成長株オープン(Jグロース)TOPIX(配当なし×

調査5ファンド全て×。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが4ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが1ファンドありました。証券系の大手の運用会社は全滅です。

三菱UFJ国際投信

ファンド名ベンチマーク評価
三菱UFJインデックス225オープン日経平均株価(配当なし×
三菱UFJDC国内株式インデックスファンドTOPIX(配当なし×
インデックスファンド225日経平均株価(配当なし×
優良日本株ファンド(ちから株)ベンチマークなし×
日本エネルギー関連株式オープン(プロジェクトE)ベンチマークなし×

調査5ファンド全て×。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが3ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが2ファンドありました。この会社もダメでした。

アセットマネジメントOne

ファンド名ベンチマーク評価
MHAM株式インデックスファンド225日経平均株価(配当なし×
日経225ノーロードオープン日経平均株価(配当なし×
DIAM国内株式インデックスファンドTOPIX(配当込み)
MHAM新興成長株オープン(J-フロンティア)TOPIX(配当なし×
日本厳選中小型株ファンドベンチマークなし×

調査5ファンド中、×が4ファンド。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが3ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが1ファンドありました。ホームページには、「フィデューシャリー・デューティーへの取り組み」として「お客さまの立場に立った情報提供やサービスの充実」を掲げていますが、実際は絵に描いた餅でした。

三井住友トラスト・アセットマネジメント

ファンド名ベンチマーク評価
DC日本株式インデックスファンドLTOPIX(配当込み)
日本厳選割安株ファンドベンチマークなし×
中小型株式オープン(投資満々)ベンチマークなし×
SMT日経225インデックス・オープン日経平均株価(配当なし×
DC日本株式エクセレント・フォーカスTOPIX(配当込み)

調査5ファンド中、×が3ファンド。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが1ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが2ファンドありました。アセマネONE同様、同じ日本株に投資する投資信託なのに、一方は配当込み指数がベンチマークに、他方は配当なし指数がベンチマークに設定されているのはなぜ。こんなことをすると顧客は混乱するだけです。ここもダメでした。

三井住友アセットマネジメント

ファンド名ベンチマーク評価
三井住友・げんきシニアライフ・オープンベンチマークなし×
トヨタグループ株式ファンドベンチマークなし×
三井住友・225オープン日経平均株価(配当なし×
三井住友・日本株式インデックス年金ファンドTOPIX(配当込み)
三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンドTOPIX(配当込み)

調査5ファンド中、×が3ファンド。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが1ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが2ファンドありました。ここもダメ。

フィデリティ投信

ファンド名ベンチマーク評価
フィデリティ・日本成長株・ファンドTOPIX(配当込み)
フィデリティ・ジャパン・オープンTOPIX(配当込み)
フィデリティ・日本配当成長株・ファンド(分配重視型)ベンチマークなし×
フィデリティ・日本小型株・ファンドRussellNomuraMid-SmallCapインデックス(配当込み)
フィデリティ・日本配当成長株投信TOPIX(配当込み)

調査5ファンド中、ベンチマークすら設定していないファンドが1ファンドありました。その他の4ファンドは「配当込み」指数がベンチマークに設定されています。「配当なし」指数をベンチマークに設定していないのは、今回調査した10社の中では、この会社だけでした。

大和住銀投信投資顧問

ファンド名ベンチマーク評価
日本株厳選ファンド・円コースベンチマークなし×
大和住銀DC日本バリュー株ファンド(DC黒潮)TOPIX(配当なし×
ニッポン中小型株ファンドベンチマークなし×
エス・ビー・日本株オープン225日経平均株価(配当なし×
マイ・ウェイ・ジャパンベンチマークなし×

調査5ファンド全て×。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが2ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが3ファンドありました。この会社もダメでした。

ニッセイアセットマネジメント

ファンド名ベンチマーク評価
ニッセイ日経225インデックスファンド日経平均株価(配当なし×
ニッセイ日本株ファンドTOPIX(配当込み)
JPX日経400アクティブ・プレミアム・オープン(JPXプレミアム)JPX日経インデックス400(米ドルベース、配当込み)
ニッセイJPX日経400アクティブファンドJPX日経インデックス400(配当込み)
ニッセイ健康応援ファンドベンチマークなし×

調査5ファンド中、×が2ファンド。配当なしの不適切なベンチマークを設定しているのが1ファンド、ベンチマークすら設定していないファンドが1ファンドありました。この会社が相対的によく見えてしまいそうですが、そんなことはありません。ここも「配当なし」指数を平気でベンチマークに設定し続けている会社です。

まとめ

調査した10社中、下記の9社が「配当なし」指数をベンチマークに設定し続けている、運用会社と判明しました。今回調査した10社のうち、「フィデリティ投信」だけが「配当なし指数をベンチマークに設定していない」会社と判明しました。日本の運用会社は全滅です。

  • 野村アセットマネジメント
  • 大和証券投資信託委託
  • 日興アセットマネジメント
  • 三菱UFJ国際投信
  • アセットマネジメントOne
  • 三井住友トラスト・アセットマネジメント
  • 三井住友アセットマネジメント
  • 大和住銀投信投資顧問
  • ニッセイアセットマネジメント

この結果だけ見ると、「配当なし」指数をベンチマークに設定するのが当たり前のような錯覚に陥りますが、そんなことはありません。こんな、顧客本位とは程遠い意味不明な行為をしているのは日本の資産運用会社ぐらいです。「赤信号、みんなで渡れば、怖くない」という感覚なのでしょう。もっと正確に言えば「業界トップの野村がそうやっているから、それでいいんだ。」というのが本音だと思います。

海外では「配当なし」指数をベンチマークとする愚行は許されません。でも、なぜか、日本ではこれがまかり通っています。日本の運用業界が、如何に内向きで、顧客の利益を軽視しているか、この点からも明らかです。顧客の利益にならないと知りながら、過去の悪しき慣習をそのまま放置し続けているのです。投資信託協会の会長も野村か大和出身者の持ち回りできまっており、自浄作用は期待できません。

また、今回の調査では、ベンチマークすら設定していない投資信託も散見されました。ベンチマークを設定しないのは、配当なし指数をベンチマークとするのと同様に、とんでもない行為です。ベンチマークが設定されていない投資信託は、たとえプラスの運用収益があがっても、それが単なるマーケット要因(株式市場全体が上がった結果)によるものか、運用担当者の実力によるものかの区別がつかないからです。

ベンチマークを設定しない理由に、絶対収益を追求しているからと答える投資信託もあるでしょう。この言い訳も日本独自の悪習です。絶対収益といえども、銀行預金を下回る運用実績では意味ありません。海外の絶対収益追求型のファンドは、短期金利をベンチマークに設定して、顧客に運用実績を示しています。顧客の利益を顧みず、自分たちの都合のいいように好き勝手やっているのが日本の運用業界の実体です。

最後に

みなさんは愛称「BigProject-N」という投資信託をご存知でしょうか。正式名称は「ノムラ日本株戦略ファンド」、野村證券が100周年記念に「社運をかけて」1兆円を集めた投資信託です。

下記は、その「ノムラ日本株戦略ファンド(愛称:BigProject-N)」の月報(2018年7月版)に掲載されている、ファンドとベンチマークの騰落率の比較表です。設定来は2000年2月2日以降の約18年7ヶ月間の騰落率です。

期間ファンドベンチマーク
1年12.0%8.3%
3年11.1%5.7%
設定来8.1%3.3%

設定来のファンドの騰落率が8.1%で、ベンチマークが3.3%。「ベンチマークを上回っているので、水準はさておき、運用成績はまずまずだな。」と思ったあなた、さっそく騙されていますよ。

この表にあるベンチマークは「配当なしTOPIX」です。このベンチマークの騰落率は「配当分」が含まれていないので、配当分を含むファンドのパフォーマンスと比較することはできません。そのことは、野村自身が十分わかっていることです。

野村アセットは、プロ向けにはTOPIX(配当込み)をベンチマークとして提示する一方で、素人向けの投資信託ではTOPIX(配当なし)を平気でベンチマークに設定している会社です。素人だけを欺く行為をして、恥ずかしくないのでしょうか。

TOPIX(配当込み)を比較対象とした正しい比較表は次のとおりです。

期間ファンドTOPIX(配当込み)
1年12.0%10.6%
3年11.1%12.6%
設定来8.1%39.6%

設定来のファンドの騰落率は+8.1%で、同期間の株式市場の騰落率+39.6%を大幅に劣後しています。

適切なベンチマークが設定されなければ、適切にファンドの評価ができなくなる理由がお分かりになったでしょうか。

スポンサーリンク