投資一任契約型のロボ・アドバイザーの大半は費用が割高で、長期で利用するほど損をするサービスです。金融業界のカモにされないように、買い手の立場にたってロボ・アドバイザーを利用する際の留意点をお伝えしたいと思います。
そもそもロボ・アドバイザーとは
ロボ・アドバイザーは、ロボットアドバイザー、ロボアドとも呼ばれる、投資サービスです。日本でのサービス開始は2016年頃で、THEO(テオ)やWealthNavi(ウェルスナビ)、楽ラップ等、複数の会社が同様のサービスを展開しています。
一般的にロボ・アドバイザーは、インターネット上で投資に関するいくつかの質問(年齢や投資経験、運用期間等)に答えることで、その人にあった資産運用方針を提示して、その方針に基づく運用ポートフォリオ(特定の投資信託や、複数の投資信託の組み合わせ)を提案するサービスと定義されます。
さらに、THEOやWealthNavi等の「投資一任契約型」のロボ・アドバイザーは、運用ポートフォリオの提案だけでなく、最適なポートフォリオの構築から購入まで行う完全お任せ型のサービスを展開しています。ただし、この場合、サービスの利用者は、運用資産残高の一定割合を「投資一任報酬」として毎年支払う必要があります。
利用検討時の留意事項
実体は費用が割高なバランス型の投資信託
THEOやWealthNavi等の投資一任型のロボ・アドバイザーは、投資一任報酬として、運用資産残高の1%前後を投資家から徴収しています。これに加えてロボ・アドバイザーが投資しているETFの信託報酬等も投資家は間接的に負担しているので、最終的に投資家が負担する実質的な費用は運用資産残高の1.2%程度となります。
すなわち、THEOやWealthNaviの実体は、信託報酬率が1.2%程度の割高なバランス型の投資信託と同じです。費用が割高のため、長期で利用するほど費用が膨らむので、当然、長期投資には不向きです。
ちなみに、米国のロボ・アドバイザーの一般的な投資一任報酬は0.25%程度です。日本の大半のロボ・アドバイザーは、米国の同様のサービスの3倍以上の費用を顧客から徴収する、非常に割高なサービスということを知ってください。
それにも関わらず、大半の日本のロボ・アドバイザーのサービス提供会社は、あたかも費用が割安であるかのような宣伝を繰り返しています。似たようなサービスで、ぼったくり商品として悪名高いラップ口座にかかる費用(年率3%前後の投資顧問報酬)と比べて、割安と考えているとしたら論外です。とにかく、この記事をご覧になっている皆さんは、サービス会社の都合のいい宣伝文句に騙されないようにご注意ください。
投資戦略の有効性が不明
THEO(テオ)やWealthNavi(ウェルスナビ)の高い投資一任報酬も、それに見合った良好な投資成果が期待できるなら、文句はありません。しかし、実際は、両社とも、巷のバランス型投資信託よりも高いリターンが期待できるとは、一切うたっていません。加えて、運用パフォーマンスを評価する上で必要不可欠なベンチマークすら設定(公表)していないありさまです。
「根拠は示せないけど、儲かりそうな商品だから、とにかく買ってよ」と言わんばかりです。「AI」だか「ノーベル賞を受賞した高度な投資理論」といった宣伝文句を使って、定量分析に基づく投資判断を売りにしている会社が、運用戦略の優位性を定量的に示していないのは残念な限りです。投資家としては、そもそも運用戦略の優位性自体の存在を疑わざるを得ません。
効果があるかどうかも分からない(示されていない)割高なロボアドバイザーは、検討する価値すらありません。そもそも、「将来の投資成果は予見不可能」、「結果は神のみぞ知る」と割り切れば、国際分散投資が実現できて、かつ、リスクが許容範囲内ならば、より費用が割安なサービスもしくは投資信託を選択するのが合理的です。長期の資産形成を目標とするなら、信託報酬が0.5%未満のバランス型ファンドの購入をお勧めします。
サービスの提供会社によって異なる提案内容
ロボ・アドバイザーが提案する「その人に合った運用方法」は、サービスの提供会社によって提案内容がかなり異なります。すなわち、「その人に合った運用方法」は、単にサービスの提供会社が独自のルールを用いて勝手に決めたものにすぎないということです。提案される運用内容が異なるので、どのサービス会社のロボ・アドバイザーを使うかによって、当然、将来の運用結果も異なるということです。
投資家は、どのロボ・アドバイザーを選ぶべきか(例えば、THEOを選ぶべきか、WealthNaviを選ぶべきか)、最も重要で困難な投資判断を最初にしなくてはいけないということです。正直、その選択は、プロでも困難です。「結果は時の運」と割り切れば、費用が割安なサービスを選択すべきと考えます。
おおげさな宣伝文句
運用会社や販売会社のウェブサイトには、ロボ・アドバイザーの宣伝文句として、人工知能(AI)、高度な金融アルゴリズム、ノーベル賞といった如何にも高度なサービスを提供しているかのような言葉が並んでいます。
しかし、ロボ・アドバイザーの実体は、「こういう質問に、こう答える人には、これが適していると提案する」といった、あらかじめ決めておいたルールに基づく結果を表示するだけのものです。今まで人間がやってきた作業(提案や証券の売買)を自動化しただけで、実質的なサービスの中身が革新的に変わったわけではありません。人工知能(AI)としてイメージする高度な情報処理とは全く異なる代物です。
まとめ
長期の資産形成を目的に国際分散投資を行うなら、効果があるかどうかも分からない(示されていない)割高なロボアドバイザーではなく、信託報酬が0.5%未満のバランス型ファンドの購入をお勧めします。
今回引き合いに出したTHEO(テオ)やWealthNavi(ウェルスナビ)を含む日本のロボ・アドバイザーは、運用期間中に継続的にかかる費用が割高なので、長期投資に向きません。
もちろん、費用が高くても、投資家が納得する根拠がある(示されている)なら、サービスの利用を検討することもできます。しかし、THEO(テオ)やWealthNavi(ウェルスナビ)ですら、肝心要の投資戦略の有効性(アセットアロケーションによって、収益性の向上がどの程度期待できるか)を全く示していないので、検討に値しません。
金融業界にとって、投資一任契約型のロボ・アドバイザーは、継続的な収入が得られるおいしいビジネスです。くれぐれも営業マンの口車に乗せられないようご注意ください。