生き馬の目を抜く資産運用業界

昔から資産運用業界は生き馬の目を抜く業界と言われてきました。そんな大げさなと思われるかもしれませんが本当です。現に、運用会社の職員が絶対に買わない割高な投資信託が多数存在していて、それらを金融知識の乏しい顧客に売りつける行為が未だに横行しています。都合のいい儲け話はありません。見た目や肩書き、巧みなセールストークに騙されないように十分に注意してください。

現職の金融庁長官の発言

最初に現職の金融庁長官の発言をご紹介します。

資産運用業界の皆さん、考えてみてください。金融知識を持った顧客には売りづらい商品を一般顧客に売るビジネス、顧客の利益よりも手数料獲得を優先するビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか出所:日本証券アナリスト協会 第8回 国際セミナー

手数料稼ぎを目的に顧客に投信信託を回転売買させる資産運用業界の悪行を厳しく批判しました。続けて、こうも発言しました。

ここ数年、友人から、こんな苦情を聞くことがよくあります。「母親が亡くなり遺品の整理をしていると、最近購入したと思われる、お年寄りには到底不向きのハイリスクで複雑な投信が、何本も出てきた」出所:日本証券アナリスト協会 第8回 国際セミナー

これらは、資産運用業界の関係者向けセミナーでの森金融庁長官の発言(2017/4/7)です。

中には購入者目線に立った素晴らしい投資信託もありますが、残念ながら、運用会社の職員が絶対に買わない割高な投資信託が多数存在していて、それらを顧客にはめこむ販売がいまだに横行しています。当事者中の当事者である金融庁の長官の発言です。まぎれもない事実なのです。

勘違いしてしまった人

かれこれ10年以上前の話です。業界大手のアセットマネジメント会社の人にこう聞かれました。

「どうして、金融業界で働く人が、高い給与を得ているかわかる?」
聞いてきたくせに、答えを待たず、彼はこう続けました。
「医者や弁護士と同じくらい重要な職種なんだ。わかる?」
「それは命の次に大事なお金を取り扱っている仕事だからだよ。わかる?」

コントのような話ですが、ほんとうの話です。

  • 少なくとも、虚業の金融業が、実業の製造業よりもえらいわけありません。
  • 少なくとも、既得権益に守られている規制産業の金融業が、自由競争の世界でしのぎを削っている製造業よりもえらいわけありません。
  • 少なくとも、組織に守られているサラリーマンが、自らリスクをとって商売をしている八百屋のおやじよりもえらいわけありません。

この人は30歳そこそこの人でしたがどういう教育を受けてきたのでしょうか。男女を問わずこのような勘違いした人が多くいるのもこの業界の特徴の一つです。今、このお馬鹿さんは、その会社で出世して相当な高給取りになっています。

銀行はさすがにひどい売り方しないよね

証券会社は昔からそんなんだからわかるけど、さすがに銀行はそんなひどいことはしないよ、とおっしゃられる方がいます。

でも、森金融庁がこの発言をした後、銀行窓販での「毎月分配型投信」の販売がピタッと止まったのはどうしてでしょうか。

毎月分配型の投信は、引き続き多く販売されていますが、毎月分配型では複利のメリットが享受できないことをお客様に理解してもらった上で投資判断していただくのが「顧客本位」ではないでしょうか。出所:日本証券アナリスト協会 第8回 国際セミナー

わかっていながら、自分たちの利益の為に、後ろめたいことやっているのは、銀行も同じだということです。むしろ銀行の方がたちが悪いかもしれません。

くれぐれも、見た目や肩書きで、人を判断しないようご注意ください。金融業界はモラルよりも利益を優先する「生き馬の目を抜く業界」という前提で、十分に警戒してください。世の中に都合のいい話はありません。巧みなセールストークに騙されて劣悪な投資信託をつかまされたり、短期で投資信託を乗り換えさせられる(高い手数料を支払わされる)ことがないように注意してください。