楽天投信VTIは、バンガードVTI(ETF)に投資する投資信託です。「楽天投信VTI」に投資する方がいいのか、購入手数料はかかるけれどランニングコストの安い「バンガードVTI」に投資する方がいいのか、多くの投資家にとっては悩ましい問題です。
質問
当サイトをご覧いただいた方から次のような質問をいただきました。
楽天投信VTIとバンガードVTI(ETF)、どっちが得か米バンガードをSBI買い付けしようとしているのですが、「10万円以上でないと手数料的に不利で、10万円以下で毎月積立なら円建てで楽天投信VTIに積み立てたほうが良い」というアドバイスを知人から受けました。
その理由を詳しく知りたくて、こちらの提供されているシュミレーションで比較しようとしたのですが、入力すべき各要素が分からず、先に進めない状態です。どうすれば、解明できるでしょうか?
ネットで検索すると、この2つの比較記事がたくさんあることに驚きました。多くの人が関心を持っている話題なので、今回は、この問い合わせに対する回答を記事にしたいと思います。
答え
いただいた質問は「エアコンの買い替え」に置き換えて考えると、答えがイメージできそうです。
すなわち、「電気代は高いけど今のエアコンを使い続けるか、初期費用はかかるけれど電気代の安い省エネ・エアコンに買い替えるべきか」という問題です。これに対する答えは「初期費用はかかるけど、買い替えた方が、長い目で見たら電気代が節約になるので得ですよ。」ということになるでしょう。
本題の質問は「初期費用はかからないけれどランニングコストが相対的に高い楽天投信VTI」と「初期費用(買付手数料)はかかるが、ランニングコストが安いバンガードVTI」とではどちらが得ですか。というもので、
その答えは「初期費用はかかるけれど、長い目でみれば(長期投資ならば)、ランニングコストの安いバンガードVTIが得ですよ。」ということになります。
シミュレーション
前提条件
シミュレーションの前提条件は次のとおりです。なお、設定条件の詳細は、ページ末尾の「Appdendix:補足説明」をご覧ください。
期待リターンとリスク
楽天投信VTI、バンガードVTIともに、期待収益率7%/年、リスク23%/年を想定
買付手数料
バンガードVTIの買付手数料は、売買代金の0.45%(最高20ドル、最低5ドル)、為替手数料は、1ドル当たり4銭(1ドル100円を想定した場合、売買代金の0.04%)を想定。
バンガードVTIの買付手数料率
楽天投信VTI | バンガードVTI | |
5万円を投資する場合 | 0% | 1.04% |
10万円を投資する場合 | 0% | 0.54% |
20万円を投資する場合 | 0% | 0.49% |
50万円を投資する場合 | 0% | 0.44% |
100万円を投資する場合 | 0% | 0.24% |
ランニングコスト
楽天投信VTIのランニングコストは、0.26%/年を想定(信託報酬0.12%/年+VTIの経費率0.04%/年+その他費用0.10%/年)
楽天投信VTI | バンガードVTI | |
信託報酬率 | 0.12%/年 | 0.00%/年 |
その他費用 | 0.14%/年 | 0.04%/年 |
合計 | 0.26%/年 | 0.04%/年 |
その他
為替レートは、1ドル100円(投資期間中、不変)として計算。
シミュレーション結果
毎月5万円を10年間積立投資した場合
楽天投信VTI | バンガードVTI | 差 | |
総投資額 | 600万円 | 600万円 | 0万円 |
支払い費用 | -38万円 | -37万円 | -1万円 |
最終運用資産額 | 707万円 | 708万円 | -1万円 |
投資損益 | 107万円 | 108万円 | -1万円 |
総額で600万円投資した結果、10年後の運用資産額の差は、バンガードVTIが楽天投信VTIよりも、1万円得という結果になりました。
この差は、実質的には計算上の誤差の範囲内といえます。すなわち、どちらに投資しても、実質的には、どっちが得とか損とかはないと言えます。
参考:シミュレーション結果詳細(毎月5万円を10年間積立投資した場合)
毎月5万円を20年間積立投資した場合
もっと長い期間、例えば20年投資したら、ランニングコストの安いバンガードVTIの方がもっとお得になるはずです。では、この場合、楽天投信VTIと比べて、どのくらい得になるのかも検証しました。
楽天投信VTI | バンガードVTI | 差 | |
総投資額 | 1,200万円 | 1,200万円 | 0万円 |
支払い費用 | -183万円 | -161万円 | -22万円 |
最終運用資産額 | 1,693万円 | 1,715万円 | -22万円 |
投資損益 | 493万円 | 515万円 | -22万円 |
投資期間を倍の20年間にすると、最終的な運用資産額の差は大きくなり、予想どおり、バンガードVTIが楽天投信VTIよりも22万円得という結果になりました。
ただ、投資総額1,200万円を考慮すると、実質的には、どっちが得とか損とか明確に言えるような差ではないと考えます。
参考:シミュレーション結果詳細(毎月5万円を20年間積立投資した場合)
毎月2万円を10年間積立投資した場合
最後に、毎月の積立金額が5万円ではなく、2万円の場合の検証を行いました。バンガードVTIの購入手数料率は、購入金額が5万円の場合は1.04%でしたが、購入金額が2万円の場合は2.54%になります。購入手数料率が上がる分、「バンガードVTI」の優位性は低下すると思われますが、結果は次のとおりです。
楽天投信VTI | バンガードVTI | 差 | |
総投資額 | 240万円 | 240万円 | 0万円 |
支払い費用 | -15万円 | -19万円 | 3万円 |
最終運用資産額 | 283万円 | 280万円 | 3万円 |
投資損益 | 43万円 | 40万円 | 3万円 |
今度は一転して「楽天投信VTI」のほうが、「バンガードVTI」よりも得という結果になりました。「バンガードVTI」は投資額2万円程度だと、高い購入手数料率がネックとなることがわかります。ただ、総額で240万円投資して、10年間の累積の差が3万円なので、実質的な差はないと考えられます。
なお、「バンガードVTI」は1株あたりの購入金額が約15,000円(2018年10月末時点)なので、少額の投資をお考えなら「楽天投信VTI」の購入一択となります。
ちなみに、同じケースで、投資期間20年としてシミュレーションすると、「楽天投信VTI」と「バンガードVTI」の差は、ほぼゼロになりました。
参考:シミュレーション結果詳細(毎月2万円を10年間積立投資した場合)
まとめ
毎月5万円の積立投資を前提にすると、投資期間が10年でも20年でも、「楽天投信VTI」と「バンガードVTI(ETF)」の投資結果(各種費用、税金控除後)に実質的な差はありません。
毎月2万円の積立投資を前提にすると、「バンガードVTI」は購入手数料率が2.54%かかるので、10年間の積立投資では「楽天投信VTI」の方が若干、得となりますが、その場合でも、差は小さく、実質的には差がないレベルです。
「バンガードVTI」の経費率は脅威の0.04%です。購入手数料はかかるものの、長期投資を目指す投資家にとって素晴らしい投資対象の1つです。一方「楽天投信VTI」は実質コストで約0.26%/年のコストがかかりので「バンガードVTI」の0.04%と比べると高い印象を持たれるかもしれません。でも実際には、購入手数料の違いや税金の支払い等を総合的に考慮すると、運用結果に実質的な差はほとんどなく、少額投資では10年間の長期運用でも「楽天投信VTI」の方が、むしろ得となるケースもありました。
最初に想定した答え「長期で投資すればするほど、ランニングコストの安い、バンガードVTIの方が得」は、確かにそのとおりですが、10年、20年での長期投資でも実質的な差がなかったことを考えれば、実は間違いだったとも言えます。
「楽天投信VTI」と「バンガードVTI(ETF)」を比較しましたが、どちらも長期投資向きの低コスト商品でと断言できます。優劣の違いは、ほんとに僅かで、実質的にはどちらを選んでも結果に大きな差はないでしょう。どちらも、長期の資産運用を目的とする投資家にお勧めできる商品です。
シミュレーション結果の詳細をご覧いただくとわかりますが、(プラスの期待収益率を前提にシミュレーションした場合)、費用の大部分は「税金」が占めることになります。NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)の制度を利用すれば、さらに有利な運用ができるでしょう。
補足: