ファンド分析 | AI日本株式オープン(絶対収益追求型)【愛称】日本AI(あい)

AI日本株式オープンは、三菱UFJ国際投信が運用する絶対収益追求型の投資信託です。主な投資対象は国内株式で、株式相場が下落する局面での損失を回避する目的で「株価指数先物の売建て」を組み合わせて運用を行っています。この投資信託を元本100万円で購入した場合、10年間で支払う費用の総額は19万9,531円です。

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ファンド概要

記載内容は2018年11月末時点の分析・評価です。最新情報は運用会社のウェブサイトでご確認ください。

AI日本株式オープン(絶対収益追求型)【愛称】日本AIの特徴は以下のとおりです。

  • 運用目標は絶対収益の追求
  • それを実現する為の投資戦略は「株式個別銘柄選択戦略」と「先物アロケーション戦略」の2つ
  • しかし、これらの投資戦略は絵に描いた餅となっていて、基準価額は株価指数に連動して僅かに動いているのが実態
  • 運用担当者が開示されておらず、誰が運用しているのかわからない。

費用の総額

この投資信託を元本100万円で購入した場合、購入者が10年間で支払う費用の総額は19万9,531円になります。

AI日本株式オープン銀行預金
費用の総額199,531円0円

※ なお、支払い費用の算出にあたって、費用控除前の期待収益率をゼロとして計算しています。詳しい設定条件はこの記事末尾の「シミュレーション詳細」からご確認ください。

購入検討時の留意点

この投資信託は、「株式個別銘柄選択戦略」と「先物アロケーション戦略」の2つの戦略で絶対収益の獲得を目指すとしています。しかし、どちらの戦略も、運用開始以来、意図したとおりに機能しておらず運用実績が低迷しています。その理由は「短期間の結果だから」ではなく「設計上の欠陥により、なるべくしてなっている」ものと思われます。なぜなら、この投資信託は、期待リターンが低い上に、売買コストを含む費用が割高な為、運用を続ければ続けるほど損が積みあがっていく可能性が高いからです。

以下、この投資信託に関して否定的な見解が続きます。運用会社による詳細な説明・情報開示がないので、あくまでも当サイトの推測という事をお含みおきください。

効果が期待できない「株式個別銘柄選択戦略」

この投資信託の「株式個別銘柄選択戦略」の成否は、「AI」の予測力ではなく、実質的には単に「高配当利回り株が市場平均を上回るか否か」によって決まるだけです。

そもそも「AI」による付加価値がどの程度あるか(期待できるのか)が示されていませんし、そもそも「AI」だから超過収益が獲得できるとは限りません。「AI」がやたらと強調されていますが、AIの寄与はあったとしても僅かで、実際は「AI」は資金集めの為の方便にすぎないのかもしれません。

低い期待リターン

仮に高配当株のパフォーマンスが好調で「株式個別銘柄選択戦略」がうまくいったとしましょう。その時、この戦略から得られる期待リターンは何%ぐらいでしょうか。

それなりのリスクをとって(例えばトラッキングエラー5%)運用した場合、期待できる超過収益は、うまく行った場合でも年間4%程度でしょう。しかも、この投資信託は、売建てている株価指数先物の差金決済に備えて常に一定程度の現金(約25%程度)を保有する必要があるため、純資産の75%程度しか株式を購入できません。すなわち、「株式個別銘柄選択戦略」の期待収益は、4%の75%、年間3%程度がせいぜいと思われます。

また、超過収益を絶対収益として取り出すために、株価指数先物を売り建てて株式エクスポージャーをヘッジする建付けとなっていますが、実際には株式エクスポージャーを正確にヘッジすることは困難です。なぜならば、ヘッジ対象の株式ポートフォリオと、ヘッジ手段として使う株価指数先物は特性が異なるため、ヘッジには相応の誤差が生じるからです。「株式個別銘柄選択戦略」で期待する年間3%程度の収益は、そのヘッジの誤差で簡単に吹き飛んでしまう水準です。「株式個別銘柄選択戦略」が意図したとおり実現できているかは極めて疑わしいでしょう。

膨らむ取引コスト

さらに、悪い情報をお伝えしなければなりません。この投資戦略は必然的に、多額の取引コストを必要とします。株式相場が上昇した場合、先物の売建てポジションでは損が発生するため、その損失分を現金で支払う必要があり、さらなる損失発生に備えて、現物株式を売却する必要があります。逆に株式相場が下落した場合、株式ポートフォリオ部分は資産価値が下がる一方で、先物の売建ポジションは資産価値が上がるので、ヘッジ比率が急上昇します。この時、仮にアロケーション戦略に変更がない場合でも、当初想定したヘッジ比率を維持する為に、先物ポジションを落として現物株式を購入する必要があります。つまり、アロケーション戦略に変更がなくても、市場の時価変動を受けて、都度、有価証券を売買しなくてはならないということです。取引コストがかかるのでリバランスは極力避けたいが、リバランスしなけれ ば意図したとおりのヘッジができなくなる為、行わざるを得ない。結果として取引コストが膨らみパフォーマンスが悪化する。そんなジレンマに陥っている可能性があります。

実際に運用報告書を見ると、現物株式の売買高比率は2倍を超えています。この投資戦略は、その設計上、多額の売買コストを必要としており、当サイトでは、そのコストは少なく見積もって年間▲0.6%程度はかかるものと推定しています。すなわち売買コストを考慮した場合、この戦略の期待リターンは年間2.4%になり、さらに、信託報酬(年▲1.296%)等の費用支払いも考えると、この戦略のコスト控除後の期待ターンは限りなくゼロに近いと推測しています。

パフォーマンスは「先物アロケーション戦略」次第

前述のとおり「株式個別銘柄選択戦略」からのリターンは期待できません(むしろ、期待リターンはマイナスではないかと思うほどです)。となれば、この投資信託のパフォーマンスを決定づけるのは「先物アロケーション戦略」となります。では、「先物アロケーション戦略」はどれくらいのリターンが期待できる代物なのでしょうか。

とるべきリスクも取っていないので儲かる可能性もない

この投資信託の「先物アロケーション戦略」は、株式市場が下落すると予想すれば、株式ポジションを先物を売り建てることによりヘッジする戦略です。株式市場が上昇するか下落するかの予測に「AI」を使っているとのことですが、まず押さえておきたいのが、これも「株式個別銘柄選択戦略」と同じで、AIだから予測が当たるとは限らないということです。株式市場の動きを予測すること自体がそもそもが眉唾ものなのです。

さて、この運用戦略の実態はどうなっているのでしょうか。マンスリーレポートの2ページ目に「実質国内株式組入比率の推移」が掲載されています。これを見る限り、運用の実態は、単に、実質国内株式組入比率を概ね20%から30%の水準で固定しているだけです。株式市場が上がろうが下がろうが、ほとんどアクティブな投資判断、投資行動を起こせていないのが実態です。

ファンドの目論見書には「実質株式組入比率を0%から50%に調整」とありますが、これまでの運用実績を見る限り、そのとおりにリスクをとって投資戦略を実行した形跡が見当たりません。運用実績を見る限り、この戦略も完全に絵に描いた餅と言えそうです。おそらく、この「先物アロケーション戦略」でリスクをとると、期待リターンの低い「株式個別銘柄選択戦略」は埋もれて、完全な先物アロケーションファンドとなってしまう。そしてこのアロケーション戦略自体の信頼性を低いので、リスクを取りたくても取れないのが実状ではないかと思われます。

このまま「先物アロケーション戦略」として「実質国内株式組入比率を概ね20%から30%の水準で固定」を継続していては、相場下落時の損失回避も期待できないばかりか、相場上昇時の収益獲得も期待薄です。そもそも、リスクをとって運用していないので、この戦略のコスト控除後の期待ターンも、限りなくゼロに近いと推測しています。

さらに言えば、先物ポジションの変更やロールオーバーに伴う取引コストも馬鹿にならない水準となっているでしょう。現物の取引コストと合わせて、少なくとも年間で▲1%以上の取引コストがかかっていると思われます。これらを全て考慮すると、この投資信託が利益を積み上げるイメージは全く湧きません。

以上は当サイトの推測です。戦略別の期待リターンはいくらでそれをどう実現するのか。運用会社による具体的な説明・情報開示が望まれます。

実態は運用効率が極めて低い株式投資信託

「株式個別銘柄選択戦略」はそもそもほとんど効果が期待できず、「先物アロケーション戦略」の実態は「常時、運用資産の20%から30%の株式エクスポージャーをとっている」だけです。

結果として基準価額は、株価指数にゆるやかに連動して動くだけです。(例えばTOPIXが10%上昇したら基準価額は2%上昇。TOPIXが10%下落したら基準価額は2%下落)

投資家の立場から言えば、この投資信託に投資するのは、「投資資金の2割でTOPIXのインデックスファンドを買って、残り8割は現金として手元に置いておく」のと効果は変わらないということです。

リスクをとらず、今の運用が続く限り、投資家はこの投資信託を保有する意味は全くありません。

どう転んでも儲からない

この投資信託は、商品設計上、儲かるイメージが全く湧きません。なぜなら、「先物アロケーション戦略」の実態は「常時、運用資産の20%から30%の株式エクスポージャーをとっているだけ」だからです。

株式市場が上昇した場合でも、信託報酬等の費用を考えれば利益が出てもごく僅かでしょう。逆に株式市場が下落したら費用負担も加えて損失が発生する。そんな投資信託ではないかと疑わざるを得ません。

例えば、1年間で、日経平均株価が10%上昇しても、このファンドは実質的には純資産の20%程度しか株式に投資していない為、ファンドのパフォーマンス(コスト控除前)は2%程度の上昇にとどまります。信託報酬は▲1.3%、推定売買コスト▲0.6%を考慮すると、日経平均株価が10%上昇した場合でも、利益はほぼゼロとなります。

逆に日経平均株価が1年間で▲10%下落した場合、このファンドは実質的には純資産の20%程度しか株式に投資していない為、ファンドのパフォーマンス(コスト控除前)は▲2%程度の下落となります。信託報酬は約▲1.3%、推定売買コストは約▲0.6%を考慮すると、日経平均株価が10%下落した場合、このファンドは約▲3%の損失が発生することになります。

株式市場が上昇する場合、基準価額はほぼトントン、株式市場が下落する場合、基準価額も下落。すなわち、株式市場が上がっても利益は出にくく、コストを考えると逆に損失が発生することもある、株式市場が下がると損失が発生する。すなわち、どうころんでも、おおよそ儲かりそうもない投資信託のように思われます。

まとめ

AI日本株式オープンは、三菱UFJ国際投信が運用する絶対収益追求型の投資信託です。「AI」をウリにしていますが、運用実績を見る限り、基準価額は単に株価指数に連動して動いているだけです。

これまでの運用実績を見る限り、絶対収益の獲得は絵に描いた餅となっています。この投資信託は、株式市場が上昇すれば基準価額は僅かに上がる一方で、下落すれば基準価額も下がる、運用効率が極端に悪い株式投資信託となっています。パフォーマンス低迷の原因は「短期の結果だから」ではなく「商品設計上の構造的な問題」にあると分析しています。リスクもとっていないので短期間で大きな損失が出ることはなさそうですが、大きく儲かることもありません。低い期待リターンと割高な費用を考えれば、運用すればするほど少しずづ損失が積みあがっていく、そんな商品のように思えます。

結論:ファンドの設計上、費用を賄うだけの収益が期待できません。投資すればするほど損をする可能性が高いと考えます。

 ご参考:費用算出の前提条件や、費用の項目別・支払先別内訳等の結果詳細は、「シミュレーション詳細」をご覧ください。

  シミュレーション詳細

さいごに

AI日本株式オープンは設定当初100億円を投資家から集めました。その後は解約傾向にありますが、それでも今でも70億円規模の運用資金を預かる大型の投資信託です。しかし、先に指摘した通り、この投資信託はおおよそ儲かりそうなイメージが全くわきません。構造上、利益は出にくく、運用実績を見る限り、損失が発生しやすい運用商品と疑わざるを得ません。運用会社が主張する2つの収益ドライバー「株式個別銘柄選択戦略」と「先物アロケーション戦略」が、絵に描いた餅となっています。

この投資信託は絶対リターンの獲得を目標としていますが、その目標リターンを何パーセントなのでしょうか。この投資信託の費用(信託報酬やその他コストを考慮すると、年間▲2%程度)を上回る利益の獲得は望めるのでしょうか。運用実績を見る限り、疑わしいと言わざるを得ません。

運用会社のウェブサイトに、最近、「バックテスト結果」がグラフとして掲載されました。「バックテストではこんなに儲かることになっています。実際の運用成績が低迷しているのはたまたま環境が悪いだけ。もう少し長い目で見てください」とでも言い訳をしているように思えます。バックテストの前提条件など詳細な説明がほとんどない為、実際のところはなんとも言えませんが、勝率が高すぎる点が気にかかります。経験上、過度なカーブフィッティングとなっているか、取引コストの見積もりが甘すぎるか、非現実的な想定(例えば、引け値を見て、実際には取引できない引け値の価格で取引できる前提でバックテストを行っている等)でバックテストが行われている可能性を疑わざるを得ません。

この投資信託は、運用経験の乏しい人が、見切り発車で設定した感がプンプンです。手遅れになる前に、素直にごめんなさいをした方がいいのではないでしょうか。「AIが流行っているので、とにかくAIと名の付く投資信託を作ってくれ」なんて販売会社に頼まれたのでしょうか。だとしたら、なんともやりきれない感じです。なんの運用実績もないファンドを買う方も買う方ですが、これを100億円も売る方も売る方です。

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